もう9月終わりとは、時の経過は早いですね
しみじみです
今回も前回に引き続き、個人の白色申告で使える制度のうち「開業費」について解説していきたいと思います。
開業費とは?
開業費については、個人の白色申告でも計上が可能ですし、法人も利用できます。
この開業費は聞いて名の通り、「事業を開業するために要した費用」をいいます。開業時には、様々な手続きやパソコンをはじめとする備品購入など、多くの費用がかかります。
事業にかかる費用なので経費計上できるのは当たり前やろと思うでしょうが、こいつは少し特殊な扱いをしますので、順番に論点を見ていきます。
費用ではなく、繰延資産として扱われる
開業費は会計上、経費として処理するのではなく「繰延資産」という資産の科目に分類されます。
資産計上後は、減価償却と同様に一定の期間で費用化していきます。
個人で考えると開業費以外には、新技術の開発や新市場の開拓などに要した費用としての「開発費」なども繰延資産に該当します。
ここで繰延資産の考え方を少しだけ
繰延資産とは、会社または個人事業主が支出する費用のうち、その費用への支出の効果が1年以上に及ぶ資産のことをいいます。
これは、支出する費用が有形か無形かを問わず、支出後に長期間収益を生む可能性が高い場合、繰延資産として一旦資産に計上し、数年間にわたって償却することができます。
まー小難しいので、なんとなくニュアンスを抑えていただければ良いです。
正直、長期間収益を生む可能性が高いとか細かく見だしたら吐き気がするので、イメージとしては、
・1年後も事業に影響を及ぼす影響力
・形のある、なしは関係ない
に該当すれば繰延資産というイメージで良いのかなと思います。
例えば、開業にあたって購入した事業用パソコンは、その後数年にわたって事業で使用することが予想されます。
そのため、開業費は開業年度にのみ一括でかかる経費として扱うのではなく、事業開始後の数年間にわたって少しずつ費用化していきます。
要は固定資産の減価償却と考え方は同じです。
通常は、定額法により均等に5年間で償却しますが、税法の考え方では、「開業費」は、任意で償却してもかまいません。
つまり好きなタイミングで費用化してよいわけです。
これはやばいですよ!!
利益出まくったときに、開業費があれば、いつでも利益を圧縮することができるので。
開業費に関しては、会社設立後まもない段階で、十分な売上を計上できていないことも多く、会社設立費用を一期の費用として計上してしまうと、初年度が赤字になり、経営を圧迫することになりかねないため、設立にかかった金額を繰延資産にし、償却の自由を与えることで税負担を軽減してあげようという制度趣旨があると考えられます。
開業費アツい!!
こうなると、開業費をアホほど計上したくなる輩が出てきそうですが、もちろんここについても異常な大きい金額だと恐らく税務署からチェックは入ると思われるので、闇雲になんでも入れすぎると、否認されます。
ここからは、具体的にいつまでの期間で、どこまで範囲の費用が開業費になるのかについて見ていきます。
どこまでの期間が開業費として認められる?
まず開業費は、開業までに要した費用ということで、この「開業日をいつにするか」が論点になります。
個人事業主の場合は、開業しようと思った日が開業日ではあるものの、厳密に法的にルールは決められているわけではないので、いつでも好きな日を開業日にできます。
そのため、一般的には開業届を提出している場合は、開業届に記載した日を開業日、開業届を提出していない場合は、開業をなにかしらで証明する必要があります。この証明は中々難しいですが、許認可が必要な場合は、その許認可の申請日や名刺など事業に必要なものを発注した日などなにかしら事業のために動いたという証明は必要でしょう。
そういう意味でも、開業日の証明のために、開業届は提出しておく方が良いとは思います。
では、開業日からどれくらいの期間の費用を開業費として計上できるのでしょうか?
ここに関しても、法的なルールとして、開業費に含むことができる期間は決まっていないので、数年前の費用であっても、それが開業に使われた費用であることを証明できるなら、開業費に含むことができます。
例えば、5年前に購入したパソコンでも、開業のために購入したのであれば開業費にできます。ただし、それが開業費であることを客観的に証明し、税務署から問われたときに納得させられるだけの資料が必要となります。
そう納得させれればいいんです!!
とジョンカビラ風に言いましたが
実務的には数ヶ月から半年前ぐらいまで、長くても1年くらいのものが一般的には妥当な範囲かとは、思います。
5年前のパソコンを事業のために買いましたと言われても、中々証明するのもキツイですし、正直タチが悪いです。
どこまでの範囲が開業費になる?
ここでは、費用の種類についてみていきます。
具体的に開業費として、認められるであろう費用は以下のものです。
・名刺、印鑑作成費用
・社外との打ち合わせ費用
・チラシなどの広告宣伝費
・開業までの借入金の利子
・パソコン購入費用
・店舗の調査に要した調査費
・開業までの家賃や通信費、消耗品費(法人は✖)
基本的には、開業前に支出したもので一般的なものが対象になると思っていただければと思います。
注意すべきは、個人の方が開業費として認められる範囲が広いです。法人には、もう一つ「創業費」という繰延資産の種類があるため、開業費で計上できるものは限定的で経常的な経費は除かれています。
一方で、以下の費用は、開業費に含めることができませんので注意しましょう。
事務所や店舗を借りるときにかかった敷金は、撤退時に返却されるものなので、そもそも経費にはならず、開業費に含むことはせず、資産として計上されます。
礼金については、契約によっては戻ってこないものではありますが、開業費とは取り扱いが異なり、礼金が20万円以下の場合はその年の経費として一括で費用処理します。20万円以上の場合は税務上の繰延資産という開業費とは異なる扱いをするものに該当し、長期前払費用として契約期間中に取り崩していくことになります。
商品を仕入れるための費用は、あくまで開業前であっても販売原価として仕訳します。これが開業費として認められるなら、皆さん開業前に大量に商品仕入れますからね。
1つあたり10万円以上する機械や設備などは、固定資産になります。 なので、パソコンも10万円を超える場合は、こちらに該当して固定資産になるため、開業費に含めることはできません。
さいごに
ここまで開業費について見てきました。
使い方次第で、開業費はかなり節税の武器になりますが、しっかりとした理論武装が必要になります。
開業前の費用とはいえ、なにかしら帳簿等に記録を残しておくことも必要となります。私の場合、開業費の詳細を別途エクセルなどにまとめて集計し、まとめてエビデンスとなる書類を一緒に保存しています。
開業費を使う場合は、しっかりとした根拠資料を作成しておきましょう。