「管理会計」導入の目的とは?

管理会計は、制度会計といわれる「財務会計」「税務会計」とは異なるもので、会社を管理するために活用する会計です。

制度会計は、法人経営上必要不可欠ですが、管理会計は、管理用の会計なので作成は任意ですが、近年は損益分岐点分析や部門別の評価基軸、様々な採算管理の手法として利用されており、企業経営を行うえで重要性は増しています。

今回は、「管理会計」を導入するうえで抑えておくべきことや考え方について解説します。

会計の優先順位

管理会計を導入するにあたり、主要の働きをすべき部署はおそらく制度会計を担う、経理の部署です。

ここでまず重要なことは、経理として第一に果たすべき使命は国や地方公共団体、株主等の外部報告のための「制度会計」を整えることであり、管理会計は制度会計の延長にある意思決定手段としての1つであるということです。

管理会計は、制度会計をもとに作成されることが多いですが、手が込めば込むほどメンテナンスが大変で、制度会計とも乖離が生じます。管理会計に時間を割かれすぎて、本来必須とされている制度会計がおろそかになっては本末転倒です。

また、管理会計導入により勘定科目や部門を細分化することで、かえって制度会計を妨げ、制度会計自体がわかりにくくるようなことがあってはなりません。

 

なので、会社内における会計の優先順位は、

「制度会計」「管理会計」

はマストです!

導入目的

管理会計が果たすべき一番の目的は、経営陣が未来に向けて明確な「意思決定」をおこなうための情報提供ツールとしての役割を果たす必要があります。

「意思決定」を行うためには、複数の選択肢を比較、検討して1つのプロセスを選択しなければなりません。

意思決定において、比較対象を明確にすることが一番重要であり、比較対象が変われば意思決定も変わるので、それぞれの対象に対して明確な定義付が必要と考えられます。企業経営において選択肢が複数あることは非常に重要なことであり、この選択肢が少なければ少ないほど、会社は窮地に追い込まれます。

この選択肢を増やし、より最善な選択を行うために必要となるのが、管理会計です。

メリット

無限の可能性

管理会計は、カスタマイズ次第で様々な役割を果たします。

主要目的である「意思決定」としてだけでなく、プラスアルファ「業績評価」「原価管理」にも役立てることができます。

「業績評価」では、人の意思や評価ではなく、明確な結果である数字をもとに各部門評価の参考資料とし、「原価管理」では、原価計算の結果を業績向上へ繋げるための仕組みを考え実行するための資料とすることが可能です。

目標・責任の明確化

管理会計を導入することで、現場の従業員は各部門における目標が明確化されるため、目標設定がしやすくなり、評価指標として客観的根拠として利用できます。

また、部門長は各部門の採算性をみることができるため、数字に対する責任を負うことになり、部門業績に対して当事者意識を持つことができます。

制度会計の効率化

管理会計では、制度会計のような決まったルールがないため、自由にルールを構築することができます。

たとえば、管理上の勘定科目・補助科目の作成をします。

これにより、制度会計的に一つにまとめていた勘定科目を性質・内容にしっかり区分して目に見える勘定科目にすることで、数字と名目をより結び付けやすくなり、勘定科目の管理がしやすくなります。

これは、制度会計上もプラスに作用し、決算早期化かつ税務申告上のリスク軽減、より正確な数字に基づく税務申告処理も可能になります。

以下は、私が行っている管理の例です。

・雑費勘定の廃止

制度会計上、便利科目で使われがちで、曖昧でわかりにくい。税務上内訳を税務署に表示する必要性があるので、これを最初から性質・内容に分けて区分する

・試験研究費、交際費、寄付金

税務申告上の優遇措置を受けるものに関しては決算早期化のため、集計が必要なものに関してあらかじめ内容によって勘定科目を区分しておく

デメリット

時間手間がかかる

「会計の優先順位」でも記載しましたが、管理会計は手間がかかります。ルールがないため自由なカスタマイズが可能ですが、自由が故、管理を細分化すればするほど事務的に煩雑かつ定期的なメンテナンスが必要となります。

管理会計はあくまで「管理のための数字の見える化」であり、まず優先すべきは「制度会計」です。

共通経費等の配賦割合についての合理性

管理会計を各部門の業績評価で利用しようとすると、必ずどの部門でも使用する「共通経費」の配賦割合が論点になります。

「光熱費」や「家賃」などがその例で、一般的には部門の人数や広さでの按分を行います。

ただ、それが各部門ごとの使用実態に即しているかと言えば、必ずしもそうではないことも多く、どの部門も自分たちの配賦経費を減らしたいのが本心です。

そのため、共通経費の配賦に関しては、各部門間の思惑が必ず作用するため、合理的な配賦基準を設けるのが非常に難しいです。

取り組む優先順位

管理会計を使うのは、主に経営者や管理職の人たちです。つまり、彼らが使いたい情報がなければ管理会計は意味がありません。

そのため、まず管理会計の取り組みは、ヒアリングから始まります。

①経営陣にヒアリングをして、数値的に各部門の何を「見える化」したいのかを明確化

②現場の各部門長にヒアリングし、どのような資料・情報提供をしてもらうかの明確化

③どのような指標を見せるか、売上・経費の種類分け、按分割合など叩き台をある程度作成

④経営陣に再度確認し調整

 

これを繰り返して、ブラッシュアップしていきます。

「よくある課題」と「見える化」の取り組み

「よくある課題」

・営業部の課題

新製品の投資可能性

既存製品の取捨選択

・総務部の課題

人員ウエイト

・生産部の課題

自社製造or委託(外注)の成否

コスト管理

「見える化」の取り組み例

・部門別の管理

部門別変動損益計算書の作成で、部門ごとの採算を取り、損益分岐点売上高、限界利益、固定費を確認し、異常値に対しての一連の報告と対策。

また、現状の数値と比較するため損益分岐点値、予算値、前年値の3項目比較を表示し、未来の着地予想予測数値も報告できるとベスト。

・商品、製品別の管理

製品別変動損益計算書の作成で、製品別の採算性を図り、各製品ごとの人員稼働率、設備稼働率の測定

・人員の管理

労働分配率(人件費/付加価値)で「一人当たり付加価値」を算定し、各部の生産効率性を図る

まとめ

ここまで管理会計を導入するうえで抑えておくべきことや考え方について解説してきました。

「よくある課題例」と「見える化」の取り組みの部分は、今後具体的に「管理会計」の記事内でそれぞれの意味を改めて解説していきたいと思います。

管理会計は、使いこなせば非常に強い武器になりますが、会社の組織が変われば構造も変わるため、定期的なメンテナンスが必要不可欠です。

少しでもメンテナンスを怠ると管理会計は実態と異なる数字を提供し、誤った経営判断をしかねません。

個人的には、中途半端にやるくらいなら管理会計は、やらない方が良いと思います。時間も手間もかけて、誤った経営判断を起こすような数字を提供するくらいなら管理会計は必要ありません。

やるなら、半期・四半期ごとにしっかりとしたメンテナンス、社内全体の意識共有が必要となります。

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