企業経営において欠かせないのが、会社の資金繰り管理だと思います。
出資を受けることができれば、銀行や信用金庫から借り入れを受けるのとは違い、資金を返済することなく、事業資金を集めることができますが、近年さまざまな投資家やベンチャーキャピタルが存在するため、どこから出資を受けるのが適切なのか、判断するのが非常に難しくなっています。
もし、中小企業で出資による資金調達を検討するならば、中小企業への出資に特化した「中小企業投資育成株式会社」を選択肢に入れるべきです。
投資家やベンチャーキャピタル以上に聞きなじみのないワードかもしれませんが、「中小企業投資育成株式会社」は国の政策実施機関なので、投資対象や保有方針、期待する収入など、様々な点で異なり「急成長」というより「安定成長」が求められます。
今回は、中小企業投資育成株式会社の投資対象や、出資の流れについて解説します。
中小企業投資育成株式会社
中小企業投資育成株式会社とは、経済産業省監督のもと、地方公共団体や金融機関等から出資を受けて、中堅・中小企業の自己資本の充実とともに、経営の安定化、企業成長を支援する会社をいいます。
株式などの引受けにより、投資先企業の自主性を尊重した友好的・安定株主として、長期にわたり中堅・中小企業の皆様の後方支援を行い、経営権の安定や事業承継に威力を発揮する「投資」、豊富な経験と投資先のネットワークを活かし、中立的な立場で支援する「育成」の2つの側面から中小企業の成長を支援している機関です。
投資育成会社は、東京・大阪・名古屋にあり、その3社で日本全国の投資育成支援を網羅しています。
東京中小企業投資育成株式会社は、国の政策実施機関です。自己資本の充実とともに、経営の安定化、企業成長を支援します。投資先…
投資業務
出資を受けるには、「株式の引き受け」と「新株予約権付社債の引き受け」の2つの方法があります。
出資上限額には特に定めがなく、申し込み企業と相談の上で金額が決まります。ただし、総議決権の半分を超える株式の引き受けは行われません。また、出資後の株式の保有期間なども特に定めておらず、企業経営の安定を目的に、長期にわたる保有を前提としています。
・株式の引受価額 :1株あたりの予想利益をもとに、企業の将来性を総合的に判断して評価
・議決権比率:引受け後の議決権比率の50%以内
・社債等利息:審査の上、所定利率を設定
育成業務
・人材紹介、ビシネスマッチング
・株式公開支援
・セミナー、情報提供
投資対象企業
対象業種は全業種となっており、設立間もない企業から上場直前の企業まで、企業の成長段階を問わずに出資を受けられます。その他以下に該当する企業が投資対象となります。
・安定的な配当を維持できる企業(継続的に利益計上が可能な企業)
・先端的・独創的な技術・サービス等を持ち、上場を志向する企業
申し込み時の注意点
投資育成会社は、出資を受けたあとに以下3点を守ることを事業者に求めています。
・安定的に配当を出すこと(早期株式公開を目指す企業を除く)
・投資育成会社が保有する株式を譲渡するときには、同族以外も相手先に含める
投資までの流れ
①相談
事業の概況・増資計画等についてヒアリングを行われ、直近3期分の決算書、株主名簿等を求められる
②申し込み
投資決定に必要な資料として、事業計画書・事業経歴書・役員等の略歴・製品カタログ等の提出を求められる
③事前調査
本社・工場等を訪問し、経営方針・事業計画・事業内容・収益見通し等についてヒアリングを求められる
④投資決定
引受けの可否及び条件を投資育成会社内で機関決定
⑤資金払込
株式・新株予約権付社債等の発行手続きと資金の払込み
⑥プレスリリース
新聞社等へプレスリリースを行う
メリット
・担保不要の長期安定資金として活用
・安定株主として、経営の安定化
・株価の引き下げ効果
・後継者育成・株式上場支援・他業種交流会開催などの各種支援
・公的機関が株主に加わることによる対外信用度のUP
デメリット
・6~10%の安定した配当を求められる
・定時株主総会の開催、決算内容・株主総会付議事項の事前説明
・基本的に安定株主としての長期保有を前提にしている
よくある質問とその回答
A:資本政策等について相談のうえ、引受けが可能な場合もある。
A:金額について特段の定めはなく、相談のうえ、金額を決定。
A:一般的には、概ね2~3ヶ月かかる。
A:具体的な上場計画のない企業でも、安定配当を実施する企業であれば利用は可能。
A:利益の状況を見ながら、できるだけ安定した配当を実施する必要はある。
A:経営の安定化を念頭に、長期保有を前提にしており、保有期間は定めていない。
さいごに
中小企業投資育成会社は、投資先企業の経営の自主性を尊重するスタンスとなっています。
国が監督している機関ということもあり、審査は比較的厳しく、書類作成や準備に手間もかかりますが、一般投資家やベンチャーキャピタルから出資を受けるよりも、自由度の高い経営を続けることができます。
また、創業時期を問わずに投資を行っているため、創業から年数を重ねた企業でも出資を受けられるチャンスがあるので、資金調達手段の一つとして「中小企業投資育成会社」の出資という手段を検討してみてはいかがでしょうか。