今回は、前回の続きで損益計算書を見るうえで抑えとくべきポイントの②を見ていきたいと思います。簡単な損益計算書も参考に載せておきます
損益計算書の構造
損益計算書の収益、費用は一定の性格ごとに大きく下記の区分に分類されて表示されます。
売上高
売上高には、本業たる事業で得た収益を表示します。基本的には、本業以外で獲得した収益は、営業外損益、特別損益に表示されます。
売上原価
売上原価は、売上を生むために直接必要とした費用の総称で、損益計算書上は、下図のように表示されます。
売上原価の計算については、在庫の商品(期首商品棚卸高)、新たに仕入れ、製造した商品のうち、残った商品(期末商品棚卸高)を差し引くことで計算されます。
なお、残った商品(期末商品棚卸高)は貸借対照表上に商品と記載されますので、次々回にでもまた見ていきたいと思います。
ここからは具体的な例で見ていきたいと思います。

期首(事業年度の最初の日)については、もちろん何も持っていない状態なので期首に商品はありません。
商品を10個仕入れ、そのうち7個売れたので、7個が売上と売上原価となり、売上と売上原価の差額が利益となります。
そして、期末(事業年度の最後の日)に残った商品3個は在庫として会社はか抱えることとなり、そのまま翌期に持ち越します。
・Ⅱ期目
期首については、Ⅰ期目の期末商品の残高をそのまま引き継ぐため、3個あることとなります。
商品を2個仕入れ(便宜上商品単価の原価はⅠ期と同じ)、前期から繰り越した期首商品分と今期仕入れた商品分すべてが売れたため、商品5個が売上と売上原価となり、売上と売上原価の差額が利益となります。
この例では、全て売り切ったので、期末に抱える商品は0ですが、もちろんこの後商品を仕入れれば、その仕入残高が期末商品の在庫となり、翌期の期首の商品残高となります。
このように、売上と原価を商品が売れたタイミングで併せて認識、計上することを費用収益対応の原則といいます。
ではなぜ、費用と収益を対応させる必要があるのか?
それは、費用と利益を対応させなければ、利益操作が可能となるからです。
例えば、今期の利益目標を100としていたが、予想以上に売上が上がり、利益が200でたとします。もちろん、望ましいことではありますが、利益が増えれば必然的に納税額も増えることとなり、経営者心理としては、納税をなんとか抑えたいと考えるでしょう。
その場合、どうするか?
利益を抑えるため、費用を増やしますね。
ただ、倍になった利益を相殺するほどの費用はそんな簡単にあげれるはずありません。
このような場合、まず費用として高額になりやすい仕入を増やすことが考えられます。
もし、費用収益対応の原則を無視できるのであれば、極端な話、商品を100仕入れることで、利益を無理やり100にすることが可能となります。
こんなものを認めてしまえば、決算間際に大量仕入れさえかけてしまえば、簡単に利益を減らすことが可能となります。
だから、売れた商品だけ費用として認めますよというルールがあるわけです。
販売費及び一般管理費
商品の販売、サービス提供=営業活動のために要した費用及び一般管理のための費用をいいます。
②の売上原価は商品を製造するために直接要した費用であり、製造業では、販売のために要した費用が計上され、サービス業では、商品の仕入れや製造がないため、ここがメインの費用となるため、大部分はここに計上されます。
その中で、会計独特な考えである減価償却費について少し話したいと思います。
減価償却費について、そもそも聞いたことない方もいるかもしれませんが、名の通り価値を減少させるために償却(費用化)するために要した費用です。
意味不明ですね笑そもそも、なんの価値を減少させるねんと思いますね。これは固定資産の価値を減少させる費用なんです
なぜか?
時間の経過とともに固定資産も劣化、型落ちとなっていき価値は落ちていくので、その価値の減少を費用として反映させようというものです。
減価償却は固定資産によって計算方法は異なりますが、国が定めた耐用年数という寿命をもとに計算され、一般的にはその耐用年数の間、価値の減少を費用とすることができます。
じゃー固定資産を取得したときに、わざわざ固定資産なんかにしないで、一括で費用にしたらよいやんと思う方もおられるかもしれません。
ただ、減価償却の一括計上は認められていません。
その理由は3つあります。
・利益操作に使われる可能性がある
これは、売上原価と考え方は一緒で、固定資産の購入は一般的に高額であるため、購入したタイミングで一括で費用計上を認めてしまうと、かなりの利益圧縮効果があるので、原則的には認められていません。
・実態に即さない
固定資産は、1年で役目を終えて使えなくなるわけではなく、何十年ないしは何百年といった長期で役割を果たす資産であり、それを一括で費用処理を認めてしまうことは、実態経済と乖離しており、減価償却という形で価値の減少という形で毎年費用計上を認める方が実態経済とマッチしているため。

・投資判断を誤らせる恐れがある
自社ビルの建設が完成すれば本来であれば資産計上されて貸借対照表に表示されます。
これが一括で費用処理されてしまえば、その取得した年は損益計算書上に建物取得費といった費用で記載されるであろうが、翌年以降は貸借対照表、損益計算書のどこにも記載されていないことになると、
「自社ビルを持っているのになぜ貸借対照表、損益計算書にもなんの記載がないのか?」
という矛盾が生じ、投資家等の利害関係者に判断を誤らせる恐れがあります。
ここで、補足すると損益計算書は1年間の成績表であるため、1年経つとリセットされ0から始まりますが、貸借対照表は過去からの積み上げなので、資産計上されると翌年以降も繰り越されます。
なので、資産を計上すると翌年以降も基本的には売却等しなければ、貸借対照表上に残っていきます。
ちなみに、資産の減価償却が仮に終わっても価値は”0”にはせず、1円だけ残しておくというルールが会計にはあります。
この「価値”0”」というのは会計のルールであり、”0”になったからモノがなくなったというわけではありませんので、「モノはありますよ」という証明として価値を1円残しておくルールとなっています。
もちろん処分や売却した時はモノ自体なくなるので、正真正銘の”0”となります。
営業外損益
企業の主たる営業活動以外(財務活動や投資活動)の原因によって経常的に発生する費用、収益をいいます。
具体的には、利息や配当金の受け取り、利息の支払い、株式の売買の損益などが記載されます。
特別損益
企業の通常の活動以外で、特別、臨時的要因で一時的に発生した費用、収益をいいます。
具体的には、災害の損失や固定資産の売却、処分の損益などが記載されます。
さいごに
今回は損益計算書を項目ごとに見てきました。
売上原価と減価償却は、金額のインパクトも大きいため、損益計算書でも主要論点となりますので、必ず押さえておきましょう。
次回は項目ごとに分かれる利益部分について、説明したいと思います。