サラリーマン法人は節税になるのか?【シミュレーション編】

前回の続きで、サラリーマン法人について今回は、具体例を交えて、メリット、デメリットをそれぞれの立場から見ていきたいと思います。

具体例

ここからは具体的な例に沿って見ていきたいと思います。今回例として挙げるのは下記3パターンです。

1、一般的な会社員パターン(法人A社個人のBさん雇用されている)

2、個人事業主パターン(法人A社個人事業主のBさん業務を委託されている)

3、サラリーマン法人パターン(個人のBさん法人B社を設立し、法人A社から法人B社業務を委託されている)

なお、税金や社会保険料の計算はおおよその目安金額です。

一般的な会社員パターン

給与支給(毎月)

A社は、所得税、住民税、社会保険料を差し引いてBさんに支給。各種金額は目安だが、おおよそ月収30万円で考えると手取りは22万円~24万円くらいになると想定されます。

A社は従業員を雇っていることによる、毎月の給与計算や給与支給事務が発生します。Bさんにとっては、税金や保険料が給与から諸々引かれるため手取りが少ない点がデメリットとして挙げられます。

預かり金の支払い(毎月)

A社は原則、従業員から所得税、住民税、社会保険料を差し引き、毎月各管轄先に支払う必要があり、支払い事務が毎月発生します

また従業員の社会保険料のうち、健康保険料と厚生年金の半額分は会社負担でプラス@で雇用保険などの労働保険についても大部分は会社負担なので、社会保険料の負担は会社にとってはかなり重いですが、従業員にとってはメリットとなります。

またBさんは、A社が各種支払い事務をしてくれるため、毎月特に事務的処理は必要ありません。

年末調整(年末)

A社は最終1年間の所得税の精算を行い、源泉徴収不足であれば追加で徴収、源泉徴収し過ぎであれば還付をします。年末調整業務は会社にとっては、1つのイベントレベルの手間のかかる業務となります。

Bさんにとっては、会社が年末調整をしてくれるので、特記事項がなければ確定申告の必要ないことはメリットです。

総括

・A社

雇用契約という名の支配下で従業員をある程度自由に扱うことができるのが雇用の最大のメリットです。

しかし、社会保険料の負担は大きく、毎月の給与事務や支払い処理、年末調整業務など事務的負担は大きく、また一度雇用すると簡単に人を辞めさせることも難しいことを考えるとメリットと同等のデメリットもあります。

・Bさん

雇用という傘の下、それなりの安定収入が見込め、社会保険料も会社が半分負担してくれ、会社が個人のお金周りのほとんどを面倒みてくれるのはメリットです。

ただ、会社員は給与所得という制限のある所得で節税がしにくいことや、毎月の手取りが少ない。また雇用される側はどうしても会社の力が強く、自由は制限されますさらには、会社がお金周りの面倒をみてくれることもあり、どうしても税金、社会保険料についてのリテラシーが低くなり、お金を稼ぐ・節約する手段への知識が少なくなりがちです。

個人事業主パターン

業務委託料支払い(毎月)

A社は業務委託の対価としてBさんに27万円を支払う。委託業務の内容にもよるが、基本的には法人と個人間の業務委託については所得税の源泉徴収が必要所得税を差し引いた金額をBさんに支払う。

業務委託の場合、雇用時の給与計算のように住民税や社会保険料の計算がなく一律の税率を乗じて所得税を差し引くだけなのでA社は事務的に非常に楽です。また、給与で支払うより業務委託の形で支払うと、消費税の仕入れ税額控除が可能です。簡単にいうと消費税の節税になるということです。

Bさんにとっても、所得税が差し引かれるだけなので、手取り額は会社員より多いです。

A社=預かり金の支払い(毎月)、Bさん=住民税、社会保険料の支払い(毎月 or 一括)

A社は所得税のみを預かっており、それを税務署に支払うだけなので、①同様に事務的負担は少ないですまた、業務委託の場合は、会社の大きな負担を占める社会保険料負担がないことが最大のメリットです

なお、このタイミングでは特にBさんに事務的な手続き等はありませんが、住民税や社会保険料の額は前年の所得によって決定されるので、もし納付額があれば毎月ないし一括納付が必要となります。

確定申告(年度末)

A社は外部のBさんに対して年末調整業務はありません。

そのため、Bさんは自分で1年間の所得を申告する必要があります。事務的には負担がかかりますが、事業に係る経費の算入が認められ、開業届と青色申告承認申請書を提出していれば、青色申告特別控除が受けられなど、節税が可能であり、ある程度、自分の意図で所得の着地を決められる利点はあります。

還付

仮にこの年の収入がA社からの360万円だけで、事業経費が360万円かかったとすれば、所得は0になります。この場合、毎月A社が預かって立替払いしていた源泉所得税36万円は、全額Bさんに還付されます。

以前、所得税の源泉徴収の仕組みについて書いた記事もがありますので、上の仕組みがイマイチ理解できない方は見て頂ければ多少理解が深まるかと思います

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総括

・A社

給与事務、年末調整がなくなり、事務処理は源泉所得税の納付くらいで、事務的負担は圧倒的に減ります。また社会保険料の負担もなく、消費税の節税にもなるので金銭的な負担も軽減できます。

その一方で、業務委託はある一定の業務を外部に委託するものであるため、雇用のように幅広い業務を都合よく振ることは難しく、また委託に際しての契約書作成事務は発生します。

・Bさん

毎月の手取り額が増えること、会社に束縛されることなく自由に仕事ができるのはメリットです。また、事業経費の算入も認められるため所得の圧縮がしやすいため、所得税、住民税、社会保険料の金額を同じ年収の会社員より抑えることができる傾向にあると思います。

ただ、安定的な雇用的立場にある会社員と異なり、自由の身である個人事業主は、収入の保証はされていないため、自分の身は自分で守る必要があります。また会社員時代に比べると分でお金の管理や、確定申告などはする必要があるため、事務的負担は増えるのはデメリットです。

サラリーマン法人パターン

法人設立

BさんはA社との雇用契約の下、会社員として働いていたが、BさんはA社を退職し、B法人を設立しA社と業務委託契約を結んだ。

Bさんは、法人の設立費用や諸々の事務的負担が発生します。

A社=業務委託料支払い(毎月)、B社=Bさんに給与支払い(毎月)

A社は業務委託の対価としてB社に30万円を支払う。基本的には、法人と法人間の業務委託については所得税の源泉徴収が必要ないため、手取り額は額面額とイコールになります。

A社は、純粋に報酬の支払いだけで良いため、事務的には非常に楽である。また②個人事業主のパターンと同様、業務委託扱いなので、消費税の節税にもなります。

B社は、額面額でそのまま報酬をもらえるため手取りが増えます。

B社からBさんに給与を出す場合、給与支払事務が発生します。

預り金支払い(毎月)

A社は特に何もする必要はありません。

②でB社はBさんに給与を支給している場合、原則毎月預かった所得税等を支払う必要があります(小規模事業者に対しては納期の特例で半年に1回まとめて払う方法も申請可能)

確定申告(年度末)

②の個人事業主の場合と同様に、A社は外部のB法人に対して年末調整業務はありません。

B法人は1年間の収支を申告する必要があります。これは、②の個人事業主の所得税の確定申告と異なり、法人税の確定申告が必要となります。節税面では、法人ということで個人事業主以上の効果は期待できますが、赤字でも会社の維持費的な住民税均等割が毎年かかることや、税理士への法人税の申告書作成依頼料がかかってきます。

社会保険料については、給与の支払状況や雇用状況にもよりますが、

・保険料の算定基礎届の提出

・労働保険料の申告

などの申告が必要にある可能性もあります。

総括

・A社

②の個人事業主とメリット、デメリットは基本的に一緒ですが、事務的負担はほとんどなくなるため、A社にとっては②の個人事業主より③のサラリーマン法人にしてくれる方が楽だと思います。

・B社

毎月の報酬は額面金額でもらえるため、資金を回しやすいことや、節税面では、法人は税率が低いことや、税制優遇制度も多いことから、圧倒的に会社員や個人事業主以上の効果は期待できます。また法人ということで、個人事業主以上に社会的認知、信頼は上がります。

その反面やはり、それなりの維持費が法人はかかるので、個人事業主以上のリスクは負います。ある程度自分で事務処理をしたとして下記費用は必ず安く見積もってもかかります。

・会社設立費用 10万円程度

・法人税等申告費用 10万円程度

・住民税均等割 7万円程度

初年度は、30万円くらい、次年度以降も最低20万円は、法人を維持するだけでかかると考えておく必要はあります。

法人税の申告については、個人の確定申告のように頑張って出来るようなものではないため、基本的に税理士に依頼した方が良いと思います。

また事務手続きも個人事業主以上に増え、法人という立場上、それなりの精度の書類の作成や保存は求められます。

以上具体例を見てきました。

簡単に雇用と業務委託のメリット、デメリットについてまとめたので、参考にどうぞ。

結論:サラリーマン法人にするべき?

上記を踏まえて、サラリーマン法人は本当に良いのか?

率直に言うと、圧倒的に稼いでいるのであれば別ですが、多くの会社員がサラリーマン法人にすべきかと言われれば、現状の日本では微妙な気がします。

法人としての節税面や業務委託という自由度という面では良い

ただ、法人の維持費が固定的にかかること

事務手続きが、会社員に比べるとかなり増えること

そしてなにより

雇用の安定度に比べると、実力がないと収入がなくなる恐れもある面前例が少なく、周りからの理解や協力が得られないこともあると考えると、安定を好むジャパニーズカルチャー的に考えると、現状はリスクが高いように思います。

なので、もしサラリーマン法人を設立するのであれば、いきなり法人化するのではなく、以下の順を追って体制を整えることをおススメします

会社員として雇用

会社で経験を積み、信頼を得る

個人事業主として業務委託に切り替える

元の雇用先以外の委託先を確保する

事業所得が500万~600万超えてきたらサラリーマン法人化検討

サラリーマン法人設立

まずは、最初の会社で雇用されているうちに、信頼を得ることが重要です。

会社の人間、情報などの内情を知っているというのは、外部の委託先に比べメリットであり、元の人間関係が良好であれば日本のような風土であれば、委託であっても末永く付き合っていけます。

そして、力をそこで蓄え、個人事業主として業務委託に契約を変えます。ここで、重要なのは、新たな委託先を探すことです。

個人で独立すれば、当然元の雇用先は100%の保証はしてくれません。なので、万が一元の雇用先から契約を打ち切られられたとしても生きていけるように、新たな委託先を確保しておく必要があります

そして、ある程度の利益、法人化した方が節税になるだけの所得あれば、いよいよサラリーマン法人の設立を検討するべきです。

ただ、サラリーマン法人は、まだまだ周りに前例が少ないと思うので、自分で切り開くだけの力と新しいことに対応できる柔軟性が必要となります。

さいごに

このコロナ下で働き方が変わる中で、もしかしたら自分の働いている会社が、サラリーマン法人をする方を募ることも十分考えられます。

所得があればあるほどメリットはありますが、結構事務的なところの面倒くさもあるので、まずは、前回の会社員+個人事業主を個人的にはおススメしたいです。

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