持続化給付金が明日から対象範囲を拡大した方向けの申請が始まります。
今回は、この拡充部分について解説と考えうる懸念点についてぼやいていきたいと思います。内容は個人事業者向けです。
申請期間
今回拡充対象となった方は、令和2年6月29日(月)から申請が可能で、期限は令和3年1月15日までで、従来の申請と期限は一緒のようです。
拡充対象者
主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者
対象要件
(2)今年の対象月の収入が昨年の月平均収入と比べて50%以上減少している(3)2019年以前から、被雇用者又は被扶養者ではない
雇用契約によらない業務委託契約等に基づく事業活動からの収入がある方で、これらの収入を確定申告における主たる収入として、雑所得又は給与所得の収入として確定申告をした方とは、
・委任契約に基づき、音楽教室や学習塾の講師など、「生徒を教える」という役割を委任されている方
・請負契約に基づき、成果物を納品されているエンジニアやプログラマー、WEBデザイナー、イラストレーター、ライターなど
・業務委託契約に基づき、化粧品や飲料など、特定取引先の商品を届け、集金する業務を委託されている方
などをいいます。
※上記の職種であっても、会社等に雇用されている方(サラリーマンの方、パート・アルバイト・派遣・日雇い労働等の方を含む。)は対象になりません。
必要資料
申請時には、以下の書類を提出
(2)今年の対象月の収入が分かる書類(売上台帳等)
(3)(1)の収入が、業務委託契約等の事業活動を示す書類
①業務委託等の契約書の写し 又は 契約があったことを示す申立書
②支払者が発行した支払調書 又は 源泉徴収票
③支払があったことを示す通帳の写し
※①~③の中からいずれか2つを提出(②の源泉徴収票の場合は①との組合せが必須)
(4)国民健康保険証の写し
(5)振込先口座通帳の写し、本人確認書類の写し
対象者
扶養されている人や会社に雇用されている人を除き、業務を請け負ううえでなにかしらの契約(雇用契約以外)を結んでいてそれを証明できる方で、雑所得か給与所得で確定申告している方であれば可能というわけです。
ちなみに、事業所得で申告されている方は、そもそも最初から対象ですからここの申告では除かれています。
ただ、契約証明ができる方で給与所得か雑所得で申告している人がどれだけいるのか?
というのが正直な意見で、あまり申請される方はいないように思います。
それ以外にも
・契約は口約束でも成立することから、個人間や簡易な業務以来の場合契約書を作成していないことが多いこと
・請負先から支払調書や源泉徴収票を出してもらうのことは、人によっては手間がかかることやそもそも請負先も発行義務はないので出していないことも考えられる
・所得税の確定申告において、事業所得よりも不利な給与所得や雑所得で申告している人が律儀に契約書の作成をして仕事を請け負っているのか?
という点も考えられます。
そもそも契約書なんて事後で作成することも可能っちゃ可能で、雑所得と組み合わせて、申告し直しないし申告不要額(20万円)の範囲内で不正を考える輩が出てきそうかなと。
個人的には、ここの拡充に関しては、事後で協力し合えばどうとでも出来るので、それであれば一度確定申告のやり直しをさせてから従来の持続化給付金の方で申請させるべきです。
ちなみに、雑所得であっても暗号資産(仮想通貨)の売買収入、役員報酬など、事業活動によらない収入については給付額算定の対象外のようです。仮想通貨の売買などは契約もくそもないですからね。
2020年1月~3月の間に創業した事業者
対象要件
(1)2020年1月から3月の間に事業により事業収入(確定申告書第1表における「収入金額等」の事業欄に記載される額と同様の算定方式によるものとする。)(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思があること。
(2)2020年4月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、2020年の開業月から3月までの月平均の事業収入に比べて事業収入が50%以上減少した月(以下「2020新規開業対象月」という。)が存在すること。
必要書類
① 持続化給付金に係る収入等申立書(個人事業者等向け)
② 通帳の写し
③ 本人確認書類
④ 個人事業の開業・廃業等届出書又は、事業開始等申告書
※開業日が2020年1月1日から3月31日まで
※提出日が2020年5月1日以前
※受付印等が押印されていること
④開業日、所在地、代表者、業種、書類提出日の記載がある書類
※④を用いる場合は、給付までに通常よりも時間を要する場合があります。
※持続化給付金に係る収入等申立書(個人事業者等向け)において対象月の月間事業収入が記載されるため、2020新規開業対象月の売上台帳は不要です。
今回の拡充版の申請については、
おそらくこっちで申請される方が大半になるかなと思います。
ただ、
開業してからすぐに売上を確保することができている事業者で
かつ
その後すぐコロナで影響が出て売上が落ちた事業者
でないと受給することができないため、普通の事業者ではあまりないのかなという印象を受けます。
ここからは、算定要件と下記の算定式を参考に、3例で給付額の算定をしてみます。
給付額算定例
給付額の算定式
S:給付額(上限100万円)
A:2020年1月から3月の間の事業収入の合計
M:開業月から2020年3月までの開業月数
(開業月は、操業日数に関わらず、1ヶ月とみなす。)
B:2020新規開業対象月の月間事業収入
例1
(1)2020年2/8事業開業、同日に開業届提出
(2)2月売上:30万円
3月売上:50万円
4月売上:10万円(新規開業対象月とする)
〇判定
① (30万円+50万円)÷2月=40万円(1~3月の売上平均)
② 10万円(4月計算対象月の場合)
③ 40万円→10万円 30万円減少のため75%減のため対象
〇計算
A=2月事業開業なので、2月と3月の売上合計30万円+50万円=80万円
M=開業月は、操業日数に関わらず、1ヶ月とみなすため2/8~3/31は2月でカウント
B=4月売上を新規開業対象月の月間事業収入とするため10万円
80万円 ÷ 2月 × 6 - 10万円 × 6 = 180万円 ∴ 上限100万円のため100万円
例2
(1)2020年1/1事業開業、4/30 開業届提出
(2)1月売上:20万円
2月売上:80万円
3月売上:50万円
4月売上:40万円
5月売上:30万円
6月売上:25万円(新規開業対象月とする)
〇判定
① (20万円+80万円+50万円)÷3月=50万円(1~3月の売上平均)
② 25万円(6月計算対象月の場合)
③ 50万円→25万円 25万円減少のため50%減のため対象
4月を対象月とする場合は20%減のため、対象外
5月を対象月とする場合は40%減のため、対象外
〇計算
A=1月事業開業なので、1~3月の売上合計20万円+80万円+50万円=150万円
M=開業月は、1/1~3/31は3月でカウント
B=4月売上を新規開業対象月の月間事業収入とするため10万円
150万円 ÷ 3月 × 6 - 25万円 × 6 = 150万円 ∴ 上限100万円のため100万円
〇ポイント
適用要件の開業日は1/1~3/31で提出日は5/1までなので、今年の1/1~5/1までに開業届を提出していれば適用可能です。
また、計算上7月以降の月を対象月とすることはできません。
例3
(1)2019年4/1開業、同日に開業届提出
(2)2019年事業収入:0
1月売上:0
2月売上:30万円
3月売上:60万円
4月売上:15万円(新規開業対象月とする)
☆2019年開業で事業収入0の場合の特例
2019年1月から同年12月の間に開業した場合であって、2019年の事業収入が存在しない事業者の場合にも本特例の適用が可能
〇判定
① 2019年事業開業かつ事業収入0
① (0+30万円+60万円)÷3月=30万円(1~3月の売上平均)
② 10万円(4月計算対象月)
③ 30万円→15万円 15万円減少のため50%減のため対象
〇計算
A=1月事業開業なので、1~3月の売上合計0+30万円+60万円=90万円
M=本例は1月の売上がないが、1/1~3/31は3月でカウントするので注意が必要
B=4月売上を新規開業対象月の月間事業収入とするため10万円
90万円 ÷ 3月 × 6 - 15万円 × 6 = 90万円 ∴ 90万円
〇ポイント
2019年開業で2019年の事業収入が0の場合は、特例的に本特例の適用可能となるが、給付額の算式のMは固定で3となるので注意が必要
さいごに
簡単ではありますが、抜粋して、例を交えて解説しました。
本日、午前8:30頃に持続化給付金が入金されました。5月1日から申請受付が始まり、スピード感という割に遅いと言われていた持続化給付金。本日が5月最終営業日ということで、1か月を超えるといよいよ心象的に遅いという印象を与えかねないため[…]
以前にも書きましたが、持続化給付金自体は計算式が単純であるため、もし調査が入ればそこそこの確率でバレるレベルのものだとは思っています。
なので、正攻法でちゃんと申請される方が賢明です。
この拡充については、一見間口を広げたように見えますが、本質的には、要件が結構きついため、正攻法での該当者はそこまで多くないように感じます。
そうなるとまた不正がどうたらの話になりそうな気はムンムンします。
まー給付金業務の請負先もグレーなので、もはやこの給付金制度自体パンドラ感は否めないですが…