【経営分析①】「収益性分析」「損益分岐点分析」

会社の経営分析をするにあたって一番簡単な方法は、財務諸表の数字を使った分析です。

これは、財務諸表の数字は客観性があるものであり、基本的に恣意性が入りにくいものであるからであり、分析は一つの指標で判断するのではなく、複数の指標を組み合わせて総合的に判断していきます。

今回と次回で、財務諸表を用いた経営分析指標について紹介をしていきます。

分析項目は、「収益性分析」「損益分岐点分析」「安全性分析」「返済能力分析」「その他分析」の5つに分けて、それぞれ解説します。

今回は「収益性分析」と「損益分岐点分析」です。

収益性分析

収益性分析は、会社の利益を生み出すことができる力を構造的な面から測定する指標分析です。

これらの指標が高いということは、少ない費用で効果的に高い売上を実現しているということでもある。

経営戦略や経営の良し悪しが直接反映される指標で、経営者や外部の利害関係者の注目が最も集まる指標といえます。

以下、代表的な指標分析を紹介していきます。

総資本経常利益率(ROA)

算式:事業利益÷総資本

事業利益とは、企業の本業での成果である営業利益に受取利息、配当金を加算した金額をいい、当該指標は使ったお金(総資本)でどれだけの利益を稼いだかを判断する指標である。

経常利益ではなく、事業利益を使用する理由は、ROAの分子の総資本のうち負債は債権者持分が含まれているにもかかわらず、経常利益は債権者への分配である支払利息がすでにマイナスされた金額であるため分子と分母の対応を図るため。

〇 総資本=負債(他人資本)+資本(自己資本)
→株主からの拠出資本と利益の内部留保
〇 総資産=資産の総合計
〇 自己資本=株主資本+評価・換算差額等(自己資本の定義が評価・換算差額等を含めるか否かで総資本と総資産の金額に相違が出る)

なお、当指標は「売上高経常利益率」と「総資本回転率」という両視点に分解して、トータル的に判断するのが望ましいとされています。

売上高経常利益率

算式:事業利益÷売上高

企業の本来の収益力(利幅)を判断する指標である。

総資本回転率

算式:売上高÷総資本

総資本回転率は、総資本の運用効率を見る指標として使われ、会社財産をどれだけ効率的に使えているかを図るため、少ない資本で多くの売上高を上げればそれだけ回転率も高くなる。

資本の回転とは、会社は事業を行うために資金調達し、この資金で設備など固定資産を購入し、原材料を調達して商品を製造します。そして商品を売って売上債権をあげ、売上債権を回収して現金(資金)を獲得します。このような流れが資本の回転です。

総資本回転率は、「売上債権回転率」「棚卸資産回転率」「固定資産回転率」などと展開し、企業が使用した財産が、売上で回収されるその速さの原因を明らかにすることができます。

総資本営業利益率

算式:営業利益÷総資本

営業利益とは、本業の利益をいい、当該指標は本業でどれだけの利益を稼いだかを判断する指標である。

自己資本当期純利益率(ROE)

算式:当期純利益÷純資産

株主が拠出した自己資本を用いて企業が株主のためにどれだけの利益をあげたか、つまり株主としての投資効率を測る指標といえます。

一般的にROEが低い会社は「経営効率の悪い会社」といわれる。

なお、当該指標は「売上高純利益率」「総資本回転率」「財務レバレッジ」の3つに分解される。

売上高純利益率

算式:当期純利益÷売上高

当期純利益は一事業年度におけるすべての損益を総合した結果であり、経常的な損益でない臨時的な特別損益により大きく変動する利益のため、分析指標としては「売上高経常利益率」の方がよく使われる。

財務レバレッジ

算式:総資本÷純資産

財務レバレッジの式は自己資本比率の式を逆にしただけであり、自己資本比率は資本に着目したが、財務レバレッジは負債に着目しており、どれぐらい借金をして資産を取得しているのか表しており、安全性を測る指標としての役割を果たしている。

総資産に対する他人資本の割合が高いほど、会社の資金調達の多くを負債でまかなっている事になり、会社は借入金の返済や利息の支払いに圧迫される可能性が高くなる。

財務レバレッジはROEとROAの話と合わせて理解することが大切です。

ROEとROAは、大まかな収益性の分析に役立ちますが、安全性分析ができないので、財務レバレッジを分析に加えることで、その欠点を補え、総合的な分析が可能となります。

売上高総利益率

算式:売上高総利益÷売上高

別名「粗利益率」と言われ、「商品力」と「販売力」によって得られる売上から原価を差し引いた“最初の利益”であり、大きければ大きいほど好ましい。

なお、製造業における売上原価には製造コストが含まれており、製造コストには「変動費」と「固定費」が含まれまており、それぞれ下記の指標に分けて分析するのが好ましい。

損益分岐点分析

損益分岐点分析は、売上目標を立てるときだけでなく、会社全体の収益構造を変えようとするとき、あるいはプロダクト・ミックスを考える際など、非常に多くの意思決定の場において活用できる。したがって損益分岐点分析は、社外より社内の意思決定を下していくうえで不可欠な指標といえます。

以下、代表的な指標分析を紹介していきます。

変動費率

算式:変動費÷売上高

売上高に対して変動費がどの程度あるのかで変動費の割合を見ます。変動費は売上に連動して変動する費用のことです。

限界利益率

算式:限界利益÷売上高

限界利益は、(売上高ー変動費)で計算され、固定費と営業利益の合計額をいう。

損益分岐点比率

算式:損益分岐点売上高÷売上高

別式:(固定費÷(1-変動費率))

損益分岐点とは変動費と固定費を売上で賄ったときに損益トントンの数字をいい、損益分岐点比率とは実際の売上高から損益分岐点売上高が何%の位置にあるかを見る指標です。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

経営安全率

算式:(1-損益分岐点売上高/売上高)

損益分岐点比率の式を逆にしただけで、売上が何%減少したら、損益分岐点すなわち経常利益がゼロになるか、という経営の安全度を示す指標で、比率が高いほど赤字リスクが小さい。

経営レバレッジ係数

算式:限界利益÷営業利益

この数値が高いということは固定費の利用度が高く、売上の増加によって多くの利益の増加が期待できるということである。

まとめ

ここまで、「収益性分析」「損益分岐点分析」について紹介してきました。

収益性分析は、財務諸表をそのまま使うので、算式さえ押さえておけば、簡単に計算できます。

損益分岐点分析については、以前の採算管理の記事の復習要素が多いので、再度確認していただければと思います。

これらの分析に共通する重要点は、当社の現在の数値だけで一喜一憂するのではなく、当社の過去の数値との比較、同業他社、同規模他社、ベンチマーク他社との比較です。

比較対象がなければ数値は意味を成しませんので、できるだけ多くの比較すべき相手を持っておきましょう。

次回は、「安全性分析」「返済能力分析」「その他分析」について紹介します。

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