前回は、主に販売するモノごと税金の負担の有無について確認してきました。
今回は、その税負担があるモノを販売して、どれだけの儲けがでれば、確定申告の必要があるかについて解説していきます。
所得金額の判定
まず、大前提に税金は売上(収入)でなく利益(所得)に課税されます。
売上と利益の違い、利益と所得の違いについては、以下記事について説明していますので参照いただければと思います。
ではどれだけ販売し利益が出れば確定申告の必要があるかについて見ていきます。以下参考リンクは、メルカリガイド(一部抜粋)から引用しています。
Q:メルカリの売上は確定申告が必要ですか?
A:洋服や生活用品等の不要品を売却した収入は、所得税の課されない譲渡所得となるため基本的に課税されません。(1点30万円以上の貴金属、美術品等の売買による所得は所得税の課税対象となります)
また、所得税の課税対象となる譲渡所得が生じた場合には、所得税の確定申告が必要になることがあります。
給与所得がある方:20万円以上の利益(所得)が生じた場合
給与所得がない方:48万円以上の利益(所得)が生じた場合
なお、所得税の確定申告が必要でない場合でも、給与所得に加えて給与所得以外の所得があった方等、住民税について所得の申告が必要になることがあります。
アンサーの書き出しは、前回の復習ですね。
実際に確定申告が必要かどうかは、給与所得の有無で変わってきます。会社員など本業の給与所得がある人は会社員としての本業以外の利益が年間20万円以上、給与所得がない人は48万円以上が確定申告のボーダーラインとなります。
前者は、俗に良く言われる副業20万円超えると確定申告が必要になるというやつです。
後者に関しては、基礎控除分48万円分を差し引けるのでその金額がボーダーとなります。ちなみに前者は、会社で年末調整をしているので、給与所得から基礎控除を差し引いているので確定申告の必要の有無については、基礎控除なしの金額20万円で判定されます。
最後の住民税の申告については、20万円のボーダーラインは、特にないので、厳密にいうと前者の場合、儲けが少しでもあれば申告は必要ということになります。一般的に少額なので個別に住民税の申告はしない方やそもそも知らない方が大半なので、スルーされているのが実情ですが、少額であっても本来は申告義務があるものということは抑えておきましょう。
後者に関しては、住民税の基礎控除は43万円あるので、その金額がボーダーになります。
譲渡所得 or 事業所得 or 雑所得
次に確定申告が必要となる場合の所得区分についてそれぞれ解説していきます。
〇 確定申告が「必要」な販売
→ 貴金属や宝石、書画骨董などで1個または1組の価額が30万円を超えるもの(譲渡所得)
→ 営利目的で得た利益(事業所得 or 雑所得)
資料は、前回のものを一部抜粋したもので、カッコ書きでそれぞれの販売の所得について記載しています。
確定申告が必要となる場合ややこしいのは、その販売目的や性質によって所得区分が変わり所得計算方法も変わってきます。プライベートで単発的に販売した場合は、譲渡所得に該当し、営利目的で販売した場合は、事業所得と雑所得のいずれかに該当し、その目的が事業に該当するかどうかによってそれぞれ所得を区分します。
譲渡所得
営利目的の場合、譲渡所得に該当する場合、そのモノの保有期間に応じ、「短期譲渡所得」か「長期譲渡所得」に区分されたうえで総合課税の対象として計算していきます。短期譲渡所得は、譲渡するまでの保有期間が5年以下のモノの譲渡所得をいい、長期譲渡所得は保有期間が5年超のモノの譲渡所得を言います。
「総合課税」は、各種所得を合計して所得税を計算する課税方式で、税率は累進課税方式がとられており、合計所得が多ければそれだけ税率も高くなります。
なお、譲渡所得でも、株式・投資信託・債券・土地・建物などの譲渡益は金額が高額となるため、他の所得と分離して課税する「分離課税」といわれる方式で税金が計算されます。
譲渡所得の計算方法は、以下の算式で計算されます。
①短期譲渡所得=収入金額-(取得費用+譲渡費用)
②長期譲渡所得=収入金額-(取得費用+譲渡費用)
③譲渡所得=短期譲渡所得+長期譲渡所得×1/2-特別控除50万円
☆ 収入金額=売却金額
取得費用=モノの購入に要した費用
譲渡費用=モノの売却に要した費用
算式を踏まえ簡単な例をみていきます。
(例)Aさんは、去年1年間メルカリで以下の商品を販売した。
①10年保有していた絵画を200万円で売却した
(取得費:50万円 譲渡費用:送料・梱包代2万円)
②3年保有していた絵画を80万円で売却した
(取得費:20万円 譲渡費用:送料・梱包代1万円)
③4年保有していた生活用タンスを30万円で売却した
(取得費:25万円 譲渡費用:送料・梱包代1万円)
所得計算
①80万円ー(20万円+1万円)=59万円
(生活用タンスは生活用動産のため、計算に含めない)
②200万円ー(50万円+2万円)=148万円
③59万円+148万円×1/2ー50万円=83万円
譲渡所得には、50万円の特別控除があるため、少なくとも所得が50万円以上でない場合には税金はかからないことになります。もし、長期譲渡所得だけであれば、所得が100万円以上でなければ税金はかからないことになります。ただ、長期譲渡所得の場合は5年超モノを保有していたという根拠資料は必要になりますので注意が必要です。
国税庁HPの譲渡所得の参考URL乗っけときます
事業所得 or 雑所得
営利目的の場合の所得は、事業所得か雑所得で計算されます。その所得区分の判定は取引状況等から見た「事業的規模」によって判断します。一般的に「事業」とは、商品の販売やサービスの提供を繰り返し継続、かつ、独立して行うことをいいます。判例や裁決事例では、「事業所得とするためには下記要件を充足する必要がある」としているようで、必ずしも全要件を満たす必要はないが、「生活の糧となる」という点を軸にして総合的に判断し、事業的規模があると言えないのであれば事業所得として申告するのは難しいようなので参照してみて下さい。
・ 営利性・有償性があること
・ 継続性・反復性があること
・ 自らリスクを引き受け、計算をしながら事業を営むものであること
・ 精神的または肉体的に相当の労力を要するものであること
・ 従業員がいたり、設備を備えたりしていること
・ 社会的に認知される職業や地位を備えていること
・ 生計の主軸となるものであること
・ それなりに長い期間において安定した収益が見込めること
非常に曖昧な書き方で、判断に困る書き方ですね。グレーな方は自己判断で「事業所得」の判断をすると危険なので、税理士や税務署等に事前にお尋ねされるのが賢明かと思われます。
ただ、一般的にメルカリなどのフリマアプリを事業所得にするには、それなりの売上規模や取引量が必要になりハードルが高いため、大部分の個人の方は、雑所得になると思います。
もし、事業所得で申告する場合は、しっかりとその根拠と言い分は用意しておきましょう。
事業所得も雑所得の計算については、収入から経費を差し引いて行いますが、過去に何度か下記の記事でもそれぞれ説明しているので気になる方は、参照して見て下さい。
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今回から仮想通貨の確定申告について解説します。3年ほど前に「億り人」という言葉が世間を賑わせてから、国税庁も仮想通貨に関しての税制制度を整え始めましたが、他の金融商品と比較すると投資家に大部分の計算を強いる部分が多く、優遇税制もない[…]
さいごに
以上ここまで利益のボーダー、所得区分と計算方法について解説してきました。
大部分の利用者は、そもそも確定申告の必要がないと思うのでそこまで税金の心配はしなくてよいと思われますが、場合によっては税金の対象になる方もいるかもしれませんので、ご自身の状況をしっかりと確認し、申告漏れがないようにお気を付けください。
次回は、「もし利益が出て確定申告しなかったとしてもバレないのか?」について、最近の動向やニュースを踏まえて、解説していきます。