前回は会計の必要性について書きました。
今回は、その会計を集約して表示するための財務諸表についてまずは話していきたいと思います。
財務諸表とは
企業は利害関係者に対して一定期間の経営成績や財務状態等を明らかにするために複式簿記に基づいて財務諸表を作成することが義務付けられています。前回の内容でいうと、財務会計に分類されるものです。
財務諸表は一般的には以下の書類で構成されます。
・損益計算書
・キャッシュフロー計算書
・株主資本等変動計算書
一般的というのも、会社法や金融商品取引法では付属明細も含まれたり、上場会社では有価証券報告書も含まれたりと法律や会社状況によって財務諸表で求められる書類は変わってきます。
この中で一般的に会社の業績を図るものとしてメジャーなものが、貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書で「財務3表」と言われます。
なお、イメージとして財務3表は、下記のような日々の取引を複式簿記のルールに従って帳簿を作成することから始まります。

複式簿記とは
ちなみに複式簿記ってなにかわかりますか?
世間でよく言われる簿記は、この複式簿記のことをいいます。
簿記には、複式簿記以外にも単式簿記もあり、お小遣い帳や家計簿など現金の管理に使われます。基本的には現金の増減のみを把握するため、非常に簡便ではありますが、現金以外の詳細残高は個別にわかりません。
会社が現在いくら借入しているのか?
売上が現在どれくらいなのか?
このような内容についても逐一把握しなければ、健全な会社経営はできません。
そのため会社では複式簿記が義務付けられています。
複式簿記は、現金の増減のみではなく、その増減原因となった入出金の内容、現金以外の預金の動きや様々な会社の取引を数値化して管理します。そのため会社規模が大きくなればなるほど、処理量は膨大となりますが、取引を一つずつ帳簿に記帳するので、詳細な財務状態がわかります。
複式簿記では、これら複数の取引情報の管理を左と右の理論、「借方」と「貸方」という概念を用いて仕訳を作成し、帳簿に記帳していくことで行います。
仕訳とは、取引の内容を伝票の左側と右側に区分けすることをいいます。
まず基本的な仕訳の形を見ていきます
借方 貸方
( × × × ) 金額 ( × × × ) 金額
借方は左側、貸方は右側をいいます。
(×××) は勘定科目といい、取引を簡便的に表す略称のようなものです。
この勘定科目は下記表の資産・負債・資本・収益・費用の5グループに分類わけされます。

仕訳は下記ルールで記載していきます。

こればっかりは慣れて覚えるかしかありません。
多分例を見た方が分かりやすいと思いますので、ここで簡単な例で時系列を追って仕訳を見ていきますので、上の表を参考に追っていって下さい。
① 資本金100万円の会社を設立
基本的に仕訳で資本項目が出る仕訳はかなり稀です。年1回仕訳あるかないかレベルです。そんな仕訳を最初の例でみるのもいかがなものですが、時系列でみていく手前お許しください。
会社設立時の仕訳は資金を会社の口座に資本金として繰り入れるため、預金の増加は資産の増加、資本金の増加は資本の増加となり、資産が100万円増加し、資本が100万円増加という仕訳になります。
② お金を50万円借りた(1年以内に返済予定)
資金の借入は、預金の増加は資産の増加、返済義務のある借入金の増加は負債の増加となり、資産が50万円増加し、負債が50万円増加という仕訳になります。
なお、借入金のうち1年以内に返済されるものは短期借入金といいます。詳しくはまた次回お話しします。
③ 現金で保有するため預金から5万円おろした
最低限手元にキャッシュとしてお金を持っておきたいということで5万円引き下ろしたなどはよくある話です。これは、現金の増加は資産の増加、預金の減少は資産の減少となり、資産が5万円増えて、5万円減っているのでプラスマイナス0となります。これは資産間の振替の仕訳になります。
④ 事務用品を3万円現金で購入した
事務用品の購入は、事務用品を支払ったことによる費用の発生、現金の減少による資産の減少となり、費用の5万円発生、資産の5万円減少という仕訳になります。
なお、実務的には勘定科目は会社によってルールがあり、ある程度自由に決めて問題ありません。会社によっては事務用品の購入を、消耗品費や雑費で扱う会社もありこれは明確なルールの下会社で継続して適用しておれば全く問題ありません。
⑤ 商品10万円を掛仕入れした
掛取引は、代金の支払いや回収を商品の購入時や販売時ではなく、一定期間たってから行う取引のことをいいます。商品の仕入は、売上を生むための原価を構成します。原価も大枠では費用に該当するため、仕入れは費用の発生、買掛金は将来お金を支払う義務(債務)であり買掛金の増加による負債の増加となり、費用の10万円発生、負債の10万円増加という仕訳になります。
なお、費用の中の、原価、費用、損失はそれぞれ性質が異なるため損益計算上は分けて記載されます。ここについてはまた次回お話します
⑥ ⑤で仕入れた商品を25万円で掛販売した
売掛金は将来お金を支払ってもらえる権利(債権)であり、売掛金の増加は資産の増加、掛販売は売上という収益の発生となり、資産の25万円増加、収益の25万円発生したという仕訳になります。
⑦ ⑥で販売した商品は25万円でなく、20万円であったことが判明した
何らかの理由で⑥の処理が誤りだったケースです。実務上は⑥の仕訳を直接修正が可能な場合は、そのまま修正することも考えられますが、会社のルール上、一度入力した仕訳は変更しないという会社もあり、その場合は⑥を本来の正しい仕訳に訂正する仕訳をいれます。
売上の減少は収益の相殺、売掛金の減少は資産の減少となり、収益の5万円減少、資産の5万円減少したという仕訳になります。
⑥は本来
でなくてはなりません。
直接⑥を修正する場合は⑥の仕訳を削除して、上記仕訳を入力することで完了しますが、今回の訂正仕訳の場合、借方と貸方を訂正金額分ひっくり返した仕訳をきります。これにより売掛金と売上はそれぞれ、25万円から5万円を差し引いた20万円の金額になります。
⑧ 借入金を5万円返済で預金から引き落とされた
借入金の減少は返済義務のある負債の減少、預金の減少は資産の減少となり、収益の5万円減少、資産の5万円減少したという仕訳になります。
時系列で一通りの流れを追ってきましたが、少しはイメージが湧きましたでしょうか?
これらを1年の取引とすると、貸借対照表と損益計算書は以下のようになります。
さいごに
以上
財務諸表と複式簿記の仕組みを見てきました。
簿記に関しては、正直慣れるしかありません。勘定科目しかり、借方・貸方のルールはある程度丸暗記した方が早いです。
そして、世の中の取引はある程度、仕訳化することが可能ですので、日常生活で起きた経済活動などをイメージし、仕訳で書いていくことをおすすめします。それを繰り返していくうちに考えずとも仕訳がイメージできるようになると思います。
次回は仕訳の積み重ねにより構成される、貸借対照表と損益計算書について例で作成したものを参考に見ていきます。