配当住民税の申告不要制度

前回の配当所得の続きで、今回は

1、確定申告で所得税については総合課税を選択して申告する

2、住民税については個別申告する

その理由とやり方について説明していきます。

なおNISA口座内の配当で、非課税範囲内での金額未満の場合は、そもそも税金が非課税とされていますので、わざわざ確定申告が必要がないことを前提に述べておきます。

概要

3年前までは特に明文規定はなく、自治体によって対応はまちまちであったようですが、平成29年税制改正で株式の配当所得や譲渡所得がある場合、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できるとはっきりと法律で決まったことで、どこの自治体でも取り扱ってくれるようになりました。

目安としては、課税所得金額が900万円以下であれば、上場株式等の配当については所得税で総合課税を、住民税で申告不要を選択すれば、最も有利な結果になります。(下図参照)

課税所得なので、年収から諸々の控除を差し引いた金額ですので、サラリーマンの年収ベースで1,200万円くらいがギリギリメリットが受けられるのではないかと思います。

所得税で総合課税を選択するケースは、他の総合課税となる所得がそれほど多くないケースです。他の総合課税となる所得が多いと累進課税制度により高い税率となり、それなら申告分離課税や申告不要制度を選択すれば上場株式等の配当の場合、所得税と住民税あわせて20.315%の税率(非上場株式の配当は20.42%の所得税のみ)で済みますから、総合課税を選択する必要はありません。

住民税は申告不要を選択する事は税金以外にも影響があります。国民健康保険料や保育料は住民税の所得割額で金額が決定されますので、住民税の申告不要制度を選択すると、申告不要分の住民税は保険料算定の所得にカウントされないため、国民健康保険料や保育料も増えないので、税金以外のメリットもあります。

以下、時系列を追って説明していきたいと思います。

実例解説

前提条件
・この年は上場株式の配当のみを収受し、株式の売買等はなかったものとする。
・一年間の配当を含めた全ての課税所得額について下記の2例で説明
(例1)課税所得額600万円の場合
(例2)課税所得額1,000万円の場合

・配当金は年額で30万円受け取ったものとし、利用者が一番多いと考えられる源泉徴収アリの特定口座を選択しているものとする

配当受取時

配当受取時については、額面金額30万円から源泉徴収で所得税15.315%と住民税5%をそれぞれ差し引いた金額239,055円となります。この時点では、課税所得は関係ないため両例ともに同一金額が源泉徴収されます。

所得税の確定申告時

まず、両例とも①で既に所得税と住民税を差し引かれているため、確定申告をするかしないかは個人の自由です。ここで確定申告をする場合の選択肢としては、分離課税か総合課税を選べます。

分離課税の場合は、配当受取時の税率で計算され、譲渡所得のマイナスを翌年以降に繰り越すことができますが、ここでは、総合課税を選択して話を進めます。

配当控除前

(例1)課税所得600万円の場合の所得税計算の税率は速算表から20%となります。

(例2)課税所得1,000万円の場合の所得税計算の税率は速算表から33%となります。

分離課税以外の総合所得は、上図の所得税の速算表に当てはめた税率によって計算されます。これに最終所得税を計算する前の税率に2.1%をかけた0.42%分復興特別所得税が加算されます。

この復興特別所得税を加味するとかなり計算が細かくなるので、わかりにくくなるかと思いましたが、他のサイトでは復興特別所得税を省略気味で、やはり復興特別所得税を含めたほうがより実際のイメージに近づくためしっかり計算しました。

住民税は課税所得に対して一律10%となりますので、両例とも同額となります。

配当控除前であれば両例ともに税額は上がるためこの時点では、配当については確定申告しない場合が有利です。

配当控除適用(住民税未申告)

(例1)

・所得税額

配当控除により10%の控除を受けるため、配当受取時より少なくなる

・住民税額

配当控除により2.8%の控除を受けるが、配当受取時より多くなる

・合計

トータルで見ると、配当受取時より配当控除適用後の方が8,715円は税金は少なくなりますが、これはあくまで税額だけを差し引いた金額となります。上記にも記載した通り、住民税は国民健康保険料や保育料などの決定時にも所得が基準で計算されるため、配当控除を適用して確定申告することで所得税は少なくなりますが、住民税は多くなり、国民健康保険料や保育料などの負担が増える可能性もあることを考えると、あまりメリットはないかもしれません。

(例2)

・所得税額

配当控除により10%の控除を受けるが、配当受取時より多くなる

・住民税額

配当控除により2.8%の控除を受けるが、配当受取時より多くなる

・合計

トータルで見ると、配当受取時より配当控除後の方が31,104円税金は多くなくます。この時点でかなりの差があり、課税所得が多くなると総合課税はかなり不利になることが分かると思います。

配当控除適用(住民税申告)

(例1)

所得税額は変わりませんが、住民税申告をして配当について住民税の申告不要の適用をすることで、住民税は配当受取時の5%で計算されるため、配当受取時と比較してトータルの税金は15,315円少なくなります。

(例2)

所得税額は変わりませんが、住民税申告をして配当について住民税の申告不要の適用をすることで、住民税は配当受取時の5%で計算されますが、それでも配当受取時と比較してのトータルの税金は24,504円多くくなります。

結果

(例1)

所得税は総合課税を選択し、住民税は個別で住民税申告をして配当に関して申告不要を選択することが一番有利とされます

(例2)

配当受取時の源泉徴収を選択(所得税の配当の確定申告不要)することが一番有利とされます

ちなみに課税所得額800万円の場合についても一応(例3)として下記に載せておきます。

(例3)の場合の所得税率は23%となるため、(例1)の所得税率20%はほとんど変わりません。住民税未申告の場合は、わずかではありますが、配当受取時の方が有利となります。つまりこの場合は、住民税申告をしない限り税額を差し引いた金額についてもメリットはありません。

ただ、仮に住民税申告をしたとしても、6,126円しか有利とならず少額の場合はたいしてお得感も薄いこともあるので、住民税申告をする手間と天秤にかけてどちらが良いかは判断されるべきだと思います。

つまり、課税所得金額900万円までは、メリットはあるが、900万に近づけば近づくほど、メリット幅は狭くなります。

申告方法

これは正直、自治体によってまちまちのようなので事前に確認される方が良いです。

私の場合は、住民税の申告書は市のHPにありましたので、それを利用しました。

申告書は、所得税の確定申告を参考に書けば問題ないですが、摘要かどこかに住民税の配当の申告不要制度の適用の旨(住民税を申告しない旨)を記載しておいて欲しいといわれました。

添付書類としては、所得税の確定申告書の写しを添付して欲しいといわれましたが、これも自治体によっては年間取引報告書などの添付を求められる場合もあるようです。

申告期限についても、原則的には所得税の確定申告までみたいですが、私の申告した市については、住民税の申告不要制度を選択する場合には、納税通知書を送達されるのが6月上旬なので、5月くらいまでに住民税申告書してもらえればいいですよと言われました。

「くらいでいいのかよ」と思いましたが、そこまで厳密に時期については問われないのかもしれません。なお、申告時はH30年度の申告なので今はどうかわかりませんが、あくまで一つの参考としてお考え下さい。

他のサイトを見ると

「所得税の確定申告と住民税の申告書どっちを先に提出しますか?」

という疑問に対して、市によっては

「先に住民税の申告をしてください」というところも見られるようですが、個人的には国税である所得税の申告に住民税も申告を合わせるものと考えられるため、基本的には所得税→住民税の順番での申告が正しいように感じますし、私が申告した時も所得税→住民税で申告しました。

とりあえずくどいですが住民税申告時は一度お住いの自治体に確認される方が良いと思います。

さいごに

少し長くなりましたが、多少はイメージ湧きましたでしょうか?

手間との兼ね合いで申告は判断されれば良いと思いますが、住民税申告も1回やればそこまで手間もかからないので、一度チャレンジされてみてはいかがしょうか?

なお、株の譲渡などでマイナスがある時は、分離課税を選択しないとそのマイナス分は翌年以降に繰り越せないため、そこは加味して判断する必要がありますので注意しましょう。

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