採算管理に使える「損益分岐点」分析(実例編)

今回は、前回の概要編を踏まえ、具体的に数値を使って「損益分岐点」分析をしてみます。

具体例1

〇例題

当社は80円で仕入れた商品を100円で販売しています。また、毎月店舗の家賃が60円かかります。

では、商品を何個販売すれば、赤字にならないでしょうか?

 

〇解説

簡単な例なので暗算で計算ができる方もいると思いますが、まずはイメージを掴むために簡単に以下表で見ていきます。

販売数量

0

1

2

3

4

5

売上高

100

200

300

400

500

費用

売上原価

80

160

240

320

400

家賃

60

60

60

60

60

60

利益

60

40

20

20

40

今回の前提は、赤字にならない商品販売数量を求めるというものです。

「赤字にならない=損益がでない」

と読み替えることができるため、利益が「0」になる損益分岐点となる販売数量を求める問題になります。

商品の仕入れ(売上原価)は、販売個数に比例するため「変動費」

店舗の家賃は、販売に関わらず発生するものなので「固定費」

とまずは、費用を「変動費」と「固定費」に分類していきます。

 

以下表を見るとよりイメージしやすいと思います。

一番下の60円は固定費である家賃です。

これに関しては、商品をいくら販売したとしても固定的に継続発生するものです。なので商品販売前からすでに△60円スタートということになります。

一方、変動費は、売上に比例して増加していき、固定費の上から伸びて(固定費+変動費)と売上高が交わるところが、損益「0」の損益分岐点ということになります。

つまり、3個が損益分岐点であり、4個以上の商品を販売すれば、利益が発生するということになるので、最低でも販売目標は3個達成しなければなりません。

前回のおさらいとして、商品を4個販売した場合の数値を用いて算式に当てはめて損益分岐点売上高についても計算してみましょう。

・変動費率の計算:(変動費÷売上高)×100

320円÷400円×100%=80%

・限界利益率の計算:100%ー変動費率

100%-80%=20%

・損益分岐点売上高の計算:固定費÷限界利益率

60円÷20%=300円

算式でも、商品を3個販売した場合の損益分岐点売上高である300円を求めることができます。

具体例2

損益分岐点売上高の計算

〇問題

以下表の損益分岐点売上高を計算してみましょう。

項目

金額

変動費

固定費

売上高

5,000

費用

売上原価

2,000

2,000

給与

1,200

1,200

給与(残業手当)

200

200

支払家賃

250

250

車両関係費

300

150

150

減価償却費

150

150

4,100

2,350

1,750

経常利益

900

〇解説

・費用を「変動費」と「固定費」に分類します。

費用によっては、車両関係費のように変動費、固定費を両費用に配分すべきものもあるので、利用割合に応じた按分が必要となります。

・変動費率の計算:(変動費÷売上高)×100

2,350円÷5,000円×100%=47%

・限界利益率の計算:100%ー変動費率

100%-47%=53%

・損益分岐点売上高の計算:固定費÷限界利益率

1,750円÷53%=3,302円

目標損益分岐点売上高の計算

〇問題

上記表をもとに、目標利益を1,200に設定した場合の目標損益分岐点売上高を計算してみましょう。

〇解説

限界利益率の計算までは、(1)損益分岐点売上高の計算と同様です。

・目標損益分岐点売上高の計算:(固定費+目標利益)÷限界利益率

(1,750円+1,200円)/53%=5,506円

 

固定費に目標利益を上乗せして、限界利益率で乗じることにより、目標利益を達成するために販売すべき売上高の数値が明らかになります。

損益分岐点売上高はあくまで採算ラインの最低基準を算定しているだけであり、資本主義社会である以上、企業は継続して利益を生み出し続けなければならないため、明確な利益目標を達成するための売上高は事前に抑えておくことは企業経営においてマストとなります。

安全性評価

安全性評価は、企業やプロジェクトごとの採算評価を行う指標としてよく使われます。

この安全性評価を行うには、損益分岐点比率を計算する必要があります。

計算式:損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷実際売上高×100

3,302円÷5,000円×100=66.04%

損益分岐点比率

企業区分

60%未満

超優良企業

6080

優良企業

8190

普通企業

91100

損益分岐点企業

100%超

赤字企業

損益分岐点比率は低ければ低いほど業績が好調であるといわれ、80%以下であれば、比較的安全性は高い企業、プロジェクトということができます。

今回の例題で見れば、66.04%という非常に優秀な数値を示しているわけです。

この損益分岐点比率を低く抑えるには、「売上の上昇」「費用の削減」の2通りのやり方があります

しかし、売上を改善するためには少なからず追加の費用が必要となり、効果的に損益分岐点比率を改善するにはまず費用の削減に注力します。

この際に、どの費用を削減するかが非常に重要となります。

結論としては、まず固定費の削減から考え、その後に変動費の削減を試みることが必要です。

これは、固定費は、売上に直接連動しない費用と考えられるため、固定費の削減が損益分岐点比率の改善に大きな影響を与えるものであること、そして変動費は売上に連動する費用なので、むやみに削減すると売上を落としてしまう可能性があるためです。

損益計算書の表示

簡単に企業の経営成績を示す損益計算書について見ておきます。

それぞれの計算書は、形式も役割も異なるものとなります。

具体例1を参考にすると、通常の損益計算書は以下の表となります。これは、財務会計に基づいて、対外的な株主や決算で利用する外向きの損益計算書と考えていただければと思います。そのため、決まったルールのなかで作成される損益計算書ということになります。

売上高

300

売上原価

240

支払家賃

60

利益

一方、損益分岐点分析用の損益計算書は以下のような表になります。損益分岐点分析の考え方は、会計で言うと管理会計という企業内部で使われる内部資料なので、基本的には、内向きの損益計算書と考えていただければと思います。なので、企業によって形式や考え方も異なりカスタマイズが可能なものです。

売上高

300

変動費

240

限界利益

60

固定費

60

利益

まとめ

ここまで具体的な数値を用いて損益分岐点分析を行ってきました。

数字は基本的には嘘をつかないので、精度の高い数字をもとに行われた分析は、それなりの精度はあります。

ただ、分析はあくまで一つの指標であり、必ず長く企業経営を行ううえで、実態とそぐわない部分が出てきます。

だからこそ、情報のアップデート、自社の過去・他社との比較、様々な指標と組み合わせて多角的に分析することが企業経営を行ううえで重要となります。

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